介護福祉士 今、介護現場では。

エピソード 8

 

ショートステイに勤務していた時です。 

色々な介護施設がありますが、私はショートステイが1番大変でした。

 

私の勤務していたショートステイは1泊2日から3か月まで利用の施設で、週末・年末年始・家族旅行と、どちらかと言えば同居されている方の都合で、お預かりしている方がほとんどでした。 介護度は様々でした。

Rさんは、にこやかで、穏やかで、優しい女性でした。 実の娘夫婦と暮らしていて、決まった曜日の週1回のご利用でした。

午前中施設のワゴン車で迎えに行き、数日間ショートステイに滞在され、夕方ワゴン車で送っていく。 毎日入浴され、レクレーションを楽しみ、顔なじみの友人も出来、日帰りのデイサービスとは違い、ゆったりと過ごされておりました。

 

Rさんを夕方家まで無事に送り施設に着いた頃、娘さんから、クレームの電話が掛かってきました。

よくよく聞くと、入所した時のカバンに入れた衣類の順番が違うと云うのです。

 

入所する時、持ち物チェックリストに記入し、退所する時も忘れ物のないように確認して、家まで送って行きます。 

万が一忘れ物があった時は、その日の内に必ず届けます。

でも、娘さんの入れた順番が違うと言われても、その証拠もないし、ただただ謝罪しましたが、皆納得出来ませんでした。 入れ忘れがあるならまだしも、洗濯して畳んできちんとカバンの中に入れたのに、入れた順番が娘さんと違うだけで、何で私たちは怒られなくてはならないの?

 

同じ業界の噂では、何処でもクレーマーで、利用お断りの所もあったようです。

 

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エピソード 7

 

グループホームに勤務していた時の事です。本来は、グループホームに入居される方は

地元の方で、比較的認知度の軽い方が対象ですが、私の経験から、最近のグループホームは要支援2から要介護5の寝たきりの方まで入居されています。

グループホームのコンセプトは、家庭の延長で、スタッフと一緒にお料理をしたり、レクレーションを楽しんだり、散歩に行ったり・・・のはずですが、私の勤務した数か所のグループホームでは、車椅子の方と寝たきりの方が半数以上でした。

その為に、私たちスタッフが大変な事の一つが入浴介助でした。

家庭と同じ風呂場で、歩行困難な方の入浴介助を事故のないように行うのです。

寝たきりの方は、ベット上で、清拭を行います。

 

経営側や家族側には、沢山の理由があるでしょうが、本当に家族の事を考えるなら、高齢者の現状に合った施設に入居していただきたいです。

 

入居させたら入れっぱなし、コロナを理由に会いにも来ない、電話もよこさない。

でも、こんなにも希薄な親子関係が・・・実は、とても多いんです。

 

高齢者住宅に勤務していた時、音信不通の家族にやっと連絡が取れ、訃報を告げると、

「関係ないので、そちらで火葬して下さい。」と、言われた事が2回ありました。

 

 

 

 

 

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エピソード 6

 

訪問介護の仕事をしている時の話です。初めての訪問の時は、同伴がつきます。

そこは高台の住宅地にある、2階建ての一軒家でした。

 

駐車場に車が止まっていることを確認すると、「あっ、いるいる。」と言いながら、同伴の上司が玄関のチャイムを鳴らしました。「こんにちは」とドアを開けると、あまりにもの、その光景に「私無理です。」と言って即座に帰ろうとしました。

そこは、よくテレビで話題になるような、ごみ屋敷でした。

玄関からずっとずっと続いているごみの山。高い所は天井までありました。

そのごみをかき分けかき分け、台所に行き、夕食の用意をするのです。

悪臭とゴキブリの死骸、いたるところの汚れとカビ。ネズミもいるらしい。

こんな所に一人で毎日夕食を作りに来るなんて。

 

「料理は適当で良いの」「次の人が見つかるまで、お願い」

 

ご主人と成人の息子さんの二人暮らし。何が良くて、こんな汚い部屋に住めるのか理解出来ず、また夏場だったのであまりにもの悪臭に私の体調も悪くなり、3回程通って次の人にバトンタッチしました。

 

訪問介護をしていると、いろんなお宅にお邪魔しますが、物が氾濫していても捨てられず、掃除もしない高齢者の独り暮らしは実に多いです。

その散乱した物につまづき、転んで骨折して救急搬送され入院、その後施設に入居される方も結構おります。 断捨離・・・大事な事だと、思いますが。

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エピソード 5

デイサービス付きの高齢者住宅に勤務していた時でした。ホールで仕事をしていると、 「Tさん、危ないよ」と、同僚の甲高い声が聞こえてきました。

振り向くとTさんが車椅子の傍で寝転んでいました。「また・・・やってる」

スタッフの間では周知の事でした。何度も何度も、車椅子に戻しては、わざと滑りおち

また車椅子に戻す。 あきらめ顔のリーダーが、寝転んでいるTさんの体に、居室から持ってきた掛布団を掛けました。 皆分かっていました。 わざとやっていること。

わざとやって施設から追い出され、家に帰ろうとしているのです。

 

Tさんは看護師でした。50年程独身のまま働いてきました。

お金は沢山あっても使うとき無い位働いてきたそうです。

そして、老後に不安を持ったTさんは、親類から養女をもらいました。

養女に世話になりながら、自宅で暮らす予定でした。

その養女に、施設に入れられたのです。

 

やがて、Tさんは退去しました。でも、家には戻っていないと思います。

キーパーソンは養女さん。Tさんの人生は養女さんが決めるのです。

おそらく、特別養護老人ホームに入居されたと思います。

 

認知症になったら、自分の思う通りにはいかないのです。

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エピソード4

高齢者施設には、家族経営から大手の経営と色々な介護施設があります。料金も色々です。家族やパートナーの入居先を迷ったら、介護特定事業所(質の高いサービスを提供する為の体制を構築している事業所)を調べて入居を決めて下さい。

とは言っても、私の知る限りでは、家庭ではとても介護出来ないと、直ぐに入れる所なら何処でも良いと、何も考えずに入居を決める家族が、残念ながらほとんどでした。

まだまだ家族と一緒に住める要介護1のOさんは、ご自分の事は何でも出来る方でしたが、短気でわがままで頑固な性格の為に、家族に言いくるめられて入居されました。家族は「お母さんが病気で入院する事になったからその間だけここで暮らしてほしい」と説得したようです。その上「息子は出張・看護師の嫁は夜勤」と施設のスタッフに口裏を合わせてほしいと、私たちは家族に頼まれました。 

施設に入居すると毎日単調な生活です。さらに、施設によっては、お一人での外出は一切できません。 散歩もです。

でもOさんは、スタッフに内緒で数回離設(一人で外に行くこと)して大騒ぎになった事があり、何とか数回ともスタッフに見つけられたから良かったのですが、他では事故に巻き込まれたり、迷子になって通報されパトカーで帰って来たりとする事も珍しくないのです。 

そんなOさんも、入居してわずか1年で癌で亡くなりました。

こんな事なら、家で家族と暮らしてほしかったと私は思いました。

離設も家に戻りたい一心だったのでしょう。

 

短気でわがままで頑固な高齢者は沢山居ます。自立していたOさんを施設に入れようと決めたのは誰なのでしょうか?

Oさんが入居したばかりの夕方、Oさんの奥様から施設に電話があったそうです。

「子供に内緒で、Oさんに会いに行ったもいいか?」と言われたようです。

キーパーソン(介護において決定権を持つ家族)が息子様ですし、Oさんの奥様は病院に入院中となっているので、施設側としては許可出来なかったようです。

 

認知症がひどくて、家族の介護負担が大きいなら、施設の入居も良いでしょうが、Oさん夫婦を離したのは、まぎれもなく同居の息子夫婦なんです。

 

 

 

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私が訪問介護の仕事をしている時の話です。同伴の人と中古の一軒家に行きました。

玄関には鍵がかかっていなくて「こんにちは」と大きな声を出して中に入って行きました。薄暗いリビングの奥に、この家のご主人は休んでいました。同伴の人が手慣れた様子でリビングの電気を点け、私にケアの手順を説明してくれました。次は私一人で訪問。聞き漏らさないようにメモを取り、間違いのないように同伴のケアをじっ見ていました。

ご主人の病気は、ALS(筋萎縮性側索硬化症)手足・舌・のどなどの筋肉が徐々に衰退し末期には寝たきりになる難病のひとつです。

2度目からは一人での訪問介護。ケアは排泄介助と食事お世話・口腔ケア。

努めて明るく声掛けして、丁寧にケアしました。とても穏やかなご主人でした。

家族は奥様と娘さんが二人。でも会った事はありませんでした。奥様は仕事で留守、娘さんは時々2階から足音がしても、降りて来た事は1度もありませんでした。

3度目4度目と訪問するうちに、気になる事が増えてきました。

何故病気のご主人が暗い日の当たらない部屋に、1日中寝かせられているのか。

何故何処も掃除がされていないのか。(特に水回りはカビだらけ)

何故アルコールの空き缶が、袋に入って勝手口に山積みされているのか。

私はやるせない気持ちになりました。家族にしか分からない葛藤があったと思う。他人の私がとやかく言うことではない。思いもしない病気が家族を変えたのだと。

 

ある日担当のケアマネジャーが教えてくれました。年頃の娘さんが結婚したらしいけれど、娘さんは父親の存在を隠したらしい・・・と。

 

訪問介護の仕事は、個々の家を毎日1回から3回訪問して、認知症の方のケアや寝たきりの方のケアをします。私は明るい気持ちで仕事を終わらせる事は少なかったです。

 

 

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エピソード 2

「逃げたい」「ずる休みしたい」施設でコロナ感染のクラスターがおきた時は、本心思いました。もう何年もの間、予防接種を4~5回受け、あらゆる感染対策をして来て、コロナ感染しないようにと万全に仕事をして来たのに、クラスターに飲み込まれて、ほとんどのスタッフがあっという間にコロナ感染しました。コロナ感染した高齢者の個々の居室に、キャップ・フェイスシールド・マスク2枚(2種類)・防護服(ガウン)を2枚重ね・ビニールの手袋2枚(2種類)・臭いくらいのアルコール消毒、それを一つの居室を出るたびに脱ぎ着して、食事の介助から排泄の介助まで1日中行いました。

ホールの床には赤いテープでレッドゾーンを作り、そこを境に仕事をしていました。

しかし私は1日で、あっけなくコロナ感染し10日程の自宅待機になりました。

残ったスタッフは、すでに以前コロナ感染していて抗体が出来ていた人のみ。

 

施設の主治医が話していました。「コロナを甘く見ないほうがいいよ。」

 

世の中は、マスク解禁(自由)になりましが、コロナがゼロになったわけではありません。亡くなっている方も、まだまだいらっしゃいます。気を付けてください。