介護福祉士 今、介護現場では。

私が訪問介護の仕事をしている時の話です。同伴の人と中古の一軒家に行きました。

玄関には鍵がかかっていなくて「こんにちは」と大きな声を出して中に入って行きました。薄暗いリビングの奥に、この家のご主人は休んでいました。同伴の人が手慣れた様子でリビングの電気を点け、私にケアの手順を説明してくれました。次は私一人で訪問。聞き漏らさないようにメモを取り、間違いのないように同伴のケアをじっ見ていました。

ご主人の病気は、ALS(筋萎縮性側索硬化症)手足・舌・のどなどの筋肉が徐々に衰退し末期には寝たきりになる難病のひとつです。

2度目からは一人での訪問介護。ケアは排泄介助と食事お世話・口腔ケア。

努めて明るく声掛けして、丁寧にケアしました。とても穏やかなご主人でした。

家族は奥様と娘さんが二人。でも会った事はありませんでした。奥様は仕事で留守、娘さんは時々2階から足音がしても、降りて来た事は1度もありませんでした。

3度目4度目と訪問するうちに、気になる事が増えてきました。

何故病気のご主人が暗い日の当たらない部屋に、1日中寝かせられているのか。

何故何処も掃除がされていないのか。(特に水回りはカビだらけ)

何故アルコールの空き缶が、袋に入って勝手口に山積みされているのか。

私はやるせない気持ちになりました。家族にしか分からない葛藤があったと思う。他人の私がとやかく言うことではない。思いもしない病気が家族を変えたのだと。

 

ある日担当のケアマネジャーが教えてくれました。年頃の娘さんが結婚したらしいけれど、娘さんは父親の存在を隠したらしい・・・と。

 

訪問介護の仕事は、個々の家を毎日1回から3回訪問して、認知症の方のケアや寝たきりの方のケアをします。私は明るい気持ちで仕事を終わらせる事は少なかったです。