介護福祉士 今、介護現場では。

エピソード 10

 

あるグループホームに勤務していた時、品のあるにこやかなRさんが入居して来ました。 季節は春でしたが、夏物も冬物もしっかり用意して、籐のタンスや押し入れ収納タンスに寝具一式と何もかもの持ち込みでした。

玄関から上がろうとしない長男のお嫁さん、せっせと働く長男、まるで対照的でした。

息子夫婦と同居しても、両親のどちらかが亡くなると、片親を施設に入れる事は決して珍しくありません。 多分、お嫁さんが望んだのでしょう。

 

帰りたいと不穏になる入居者は多いのですが、Rさんは1度も口にしませんでした。

 

最初は元気だったRさんも、認知症が進み、杖歩行から車椅子になり、やがては寝たきりになりました。

それからがスタッフの介護は最悪でした。

おむつの交換の抵抗、食事介助の抵抗、(入浴が無理なので)清拭の抵抗。

噛みつく、唾を飛ばす、食べた物を吐く、蹴飛ばす、叩く。

 

私も噛まれ、数日間歯形が残っていました。

 

そんなRさんも、あっけなく息を引取りました。

 

あんなに激しい方も珍しく、同居していた長男のお嫁さんが会いに来なかった理由も

何となく分かった気がします。

 

亡くなったから許すとかじゃなく、亡くなっても絶対許さない関係。

 

多いんですよ、実に・・・。